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バイオ炭で米国ワシントン州の温室効果ガス排出量の最大19%を相殺



米国農務省森林局は2023年夏、バイオ炭の製造は、森林伐採を削減する手段として、また気候変動の緩和策として有効であると発表しました。従来の燃料削減手段から生じる大気の質や土壌の健全性の問題の多くを軽減できます。土壌に炭素を速やかに貯蔵でき、さまざまな場所で使える手段のひとつです。


森林で使う燃料を削減しようとすると、森林廃棄物や価値の低い切り枝が多く発生します。従来、切り枝は粉砕されてチップになり、製材所に運ばれるか、現場で流通するか、あるいは積み重ねて燃やされていました。切り枝を現場で燃やすと、焼却によって下の土壌が焦げ、外来植物が繁殖する生産性の低い土壌が残るため、森林が回復するまでに何十年もかかります。加えて、大気の質の低下、短時間での焼却、焼却後の土壌の回復が困難であること、延焼のリスクなども懸念されます。


バイオ炭と気候変動の影響緩和の事例

バイオ炭の製造・利用により、米国ワシントン州だけでも温室効果ガス排出量の8%から19%を相殺できます。バイオ炭は炭素を貯留するだけでなく、土壌の保水力も高めます。例えば、バイオ炭が本来の有機物と同様の働きをすると仮定すれば、土壌有機物が1%増加すると、土壌の質にもよりますが保水量が1.5~5%増加する可能性があります


また、バイオ炭の製造では熱が発生するので、発電にも使えて、再生可能でない燃料の需要を減らせます。土壌への炭素貯留と発電への影響を合わせると、10ギガトン(GT)近くの二酸化炭素を相殺することができるでしょう。また、従来通り切り枝を積み上げて燃やした場合に、大気中に放出されていたはずの炭素の一部を土壌に貯留できるので、気候変動の緩和にも役立ちます。


バイオ炭と炭素隔離

切り枝の焼却によって大気中へ放出される炭素の量は、積み上げた切り枝に蓄積された炭素の92%から94%と推定されています。それに比べ、切り枝から製造したバイオ炭は、土壌に施用された場合に安定性が高く炭素含有量が高いため、最終的には焼却や自然のバイオマス分解に比べ、炭素排出量を減らすことができます。また、森林の土壌有機物が増加することで、保水力と可用性が高まり、干ばつや虫害、病害の発生など、気候変動による影響に対して森林の回復力が高まります。


トレードオフ:バイオ炭のバランス

バイオ炭の製造は木が伐採された場所の近くで行われることが多く、主に、(1)手作業や機械での山積み、(2)様々な大きさのキルン、(3)エアカーテン・バーナーなどの手段を用います。バイオ炭に蓄積される炭素の量は、製造方法、燃焼時の温度、木材の種類などによって異なります。どの製造方法でも、バイオマスを燃焼させるため炭素は大気中に排出されます。しかし、これら3つの方法では、切り枝を積み上げた山の一番上で着火させればフレームキャップが発生するため、従来の野焼きよりも炭素排出量は大幅に少なくなります。キルンでフレームキャップ技術を使えば、木材を効率的に少ない煙で燃焼させることができます。エアカーテン・バーナーを使用すると、燃焼ビンの上に空気のカーテンができるため、煙や微粒子が大気に放出されるのを防ぎます。


ブラックカーボン

「ブラックカーボン」はすべての火種から排出されていますが、粒子が小さいためエアロゾルとみなされ、バイオ炭とは区別して認識すべきです。バイオ炭は土地利用のために作られますが、ブラックカーボンは燃焼過程で発生する残渣(すす)で、ブラックカーボンの粒子は非常に小さいため、空気中に浮遊したまま風に乗って運ばれます。標高の高い場所にブラックカーボンがあると、雪解けを早めたり、大気汚染を引き起こしたり、アレルギーや心血管疾患の増加など公衆衛生に影響を及ぼしたりする可能性があります。切り枝をエアカーテン・バーナーやキルンでよりクリーンに燃やすことで、こうした排出物を抑制できれば、気候への影響も減らせます。


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